「(5)状況に応じたコミュニケーションに関すること。」は,コミュニケーションを円滑に行うためには,伝えようとする側と受け取る側との人間関係や,そのときの状況を的確に把握することが重要であることから,場や相手の状況に応じて,主体的にコミュニケーションを展開できるようにすることを意味している。
目次
具体的指導内容例と留意点
障害による経験の不足などを踏まえ,相手や状況に応じて,
- 適切なコミュニケーション手段を選択して伝えたりすること
- 自分が受け止めた内容に誤りがないかどうかを確かめたりすること
など,主体的にコミュニケーションの方法等を工夫することが必要である。
こうしたことについては,
- 実際の場面を活用したり
- 場を再現したり
するなどして,どのようなコミュニケーションが適切であるかについて具体的に指導することが大切である。
また,友達や目上の人との会話,会議や電話などにおいて,
- 相手の立場や気持ち,状況などに応じて,適切な言葉の使い方ができるようにしたり
- コンピュータ等を活用してコミュニケーションができるようにしたり
することも大切である。
視覚障害のある幼児児童生徒の場合,視覚的な情報の入手に困難があることから,場に応じた話題の選択や,部屋の広さや状況に応じた声の大きさの調節,話し方などに課題が見られることが少なくない。
こうした場合,例えば,
- 相手の声の様子や握手をした際の手の位置から,相手の体格や年齢などを推測して話を進めたり
- 声の響き方から,部屋の広さや相手との距離を判断して声の出し方を調節したり
するなど,場や状況に応じた話し方を身に付ける指導を行う必要がある。
LDのある児童生徒の場合,話の内容を記憶して前後関係を比較したり類推したりすることが困難なため,会話の内容や状況に応じた受け答えをすることができない場合がある。
このような場合には,
- 自分で内容をまとめながら聞く能力を高める
- 分からないときに聞き返す方法や相手の表情にも注目する態度を身に付ける
などして,そのときの状況に応じたコミュニケーションができるようにすることが大切である。
自閉症のある幼児児童生徒の場合,会話の内容や周囲の状況を読みとることが難しい場合があるため,状況にそぐわない受け答えをすることがある。
そこで,
- 相手の立場に合わせた言葉遣い
- 場に応じた声の大きさ
など,場面にふさわしい表現方法を身に付けることが大切である。
なお,その際には,実際の生活場面で,状況に応じたコミュニケーションを学ぶことができるような指導を行うことが大切である。
状況に応じるためには、状況を判断する力を高める必要があります。
失敗を過度に恐れず「直ぐに修正すればOK!」というマインドも育てたいものです♪
他の項目との関連例
家庭などの生活の場では普通の会話ができるものの,学校の友達とは話すことができないなどの選択性かん黙の幼児児童生徒の場合,まず,気持ちが安定し,安心できる状況作りや信頼できる人間関係作りが重要である。
その上で,
- 幼児児童生徒が興味・関心のある事柄について,共感しながら一緒に活動したり
- 日記や作文などを通して気持ちや意思を交換したり
する機会を多くすることが大切である。
また,状況に応じて,筆談などの話し言葉以外のコミュニケーション手段を活用することも大切である。その際,幼児児童生徒が自信をもち,自己に対して肯定的なイメージを保つことができるような指導をすることが大切である。
したがって,場や相手の状況に応じて,主体的なコミュニケーションを展開できるようにするには,この項目の内容と「2心理的な安定」や「3人間関係の形成」等の区分に示されている項目の中から必要な項目を選定し,それらを相互に関連させて具体的な指導内容を設定することが大切である。
話さなくても、コミュニケーションができて、活動が成立したらOKと考えましょう♪
入院中の幼児児童生徒の中には,治療への不安だけでなく,
- 自宅に帰ることができるのだろうか
- 入院前と同じ生活ができるのだろうか
- 学校での学習についていけるのだろうか
- クラスの友達は自分のことを忘れていないだろうか
などの不安を抱えながら生活することが多い。
しかし,不安の原因が分からない場合や気持ちを言語化することができない場合には,もやもやとした気持ちの状態が続いてしまうことがある。
また,
- 親には心配させたくない
- 治療に関わる看護師等には弱いところを見せたくない
ため強がりを言い続けることもある。
このような不安を表出することができないことによるイライラとした気持ちが,周囲の友達や看護師,教師等への暴言や,物を投げつけるなどの攻撃的な行動につながることがある。
特に入院直後は,このような不安を抱えることが多いので,
- 先に入院していた幼児児童生徒の体験や気持ちの変化等を聞くことを通して
- これらの行動や言葉の背景にある不安に気付かせ
- 遊びや話し合い等の中で,不安を言語化し,気持ちの安定につなげていく
ことが重要である。
したがって,入院中の幼児児童生徒が状況に応じたコミュニケーションを展開できるようにするには,この項目の内容と「2心理的な安定」や「3人間関係の形成」等の区分に示されている項目の中から必要な項目を選定し,それらを相互に関連付けて具体的な指導内容を設定することが大切である。
「不安をぶつける」と衝突が起こりがち。
受けとめてもらえるように表現する力を身につけることが大切です♪
自閉症のある幼児児童生徒の場合,
- 援助を求めたり依頼したりする
- 必要なことを伝えたり,相談したりする
ことが難しいことがある。
このような要因としては,
- 思考を言葉にして目的に沿って話すこと
- 他者の視点に立って考えることが苦手なこと
などが考えられる。
また,コミュニケーションにすれ違いが生じることが多いことから,話す意欲が低下していることが考えられる。
このような場合には,
- 日常的に報告の場面をつくること
- 相手に伝えるための話し方を学習すること
- ホワイトボードなどを使用して気持ちや考えを書きながら整理していくこと
が大切である。
また,こうしたコミュニケーションの基礎的な指導を工夫するほか,
- 安心して自分の気持ちを言葉で表現する経験を重ね
- 相談することのよさが実感できるように指導
していくことが大切である。
また,自分のコミュニケーションの傾向を理解していくことも重要である。
したがって,自閉症のある幼児児童生徒に,適切に報告したり相談したりする力を育てるには,この項目の内容と「2心理的な安定」,「3人間関係の形成」等の区分に示されている項目の中から必要な項目を選定し,それらを相互に関連付けて具体的な指導内容を設定することが大切である。
まずは担任の先生に相談して、相談することの良さに気づくところからスタートです。
そこから、自分の相談の仕方次第で様々な人に頼れるようになることに気づいていきましょう♪