「(2)病気の状態の理解と生活管理に関すること。」は,自分の病気の状態を理解し,その改善を図り,病気の進行の防止に必要な生活様式についての理解を深め,それに基づく生活の自己管理ができるようにすることを意味している。
目次
②具体的指導内容例と留意点
糖尿病の幼児児童生徒の場合,従来から多い1型とともに,近年は食生活や運動不足等の生活習慣と関連する2型が増加している。
そのため,
- 自己の病気を理解し血糖値を毎日測定
- 病状に応じた対応ができるようにする
- 適切な食生活や適度の運動を行う
などの生活管理についても主体的に行い,病気の進行を防止することが重要である。
二分脊椎の幼児児童生徒の場合,尿路感染の予防のために
- 排泄指導
- 清潔の保持
- 水分の補給
- 定期的に検尿を行うこと
に関する指導をするとともに,長時間同じ座位をとることにより褥瘡ができることがあるので,定期的に姿勢変換を行うよう指導する必要がある。
進行性疾患のある幼児児童生徒の場合,
- 病気を正しく理解
- 日々の体調や病気の状態の変化に留意
- 過度の運動及び適度な運動に対する理解
- 身体機能の低下を予防
するよう生活の自己管理に留意した指導を行う必要がある。
うつ病などの精神性の疾患の幼児児童生徒の場合,
- 食欲の減退などの身体症状
- 興味や関心の低下や意欲の減退
などの症状が見られるが,それらの症状が病気によるものであることを理解できないことが多い。
このような場合には,医師の了解を得た上で,幼児児童生徒が病気の仕組みと治療方法を理解するとともに,ストレスがそれらの症状に影響を与えることが多いので,自らその軽減を図ることができるように指導することが大切である。
例えば,
- 日記を書くことでストレスとなった要因に気付いたり
- 小集団での話合いの中で,ストレスを避ける方法や発散する方法を考えたり
することも有効である。
口蓋裂の既往歴がある幼児児童生徒の場合,滲出性中耳炎やむし歯などになりやすいことがあるため,日ごろから幼児児童生徒の聞こえの状態に留意したり,丁寧な歯磨きの習慣形成に努めたりするなどして,病気の予防や健康管理を自らできるようにすることが大切である。
てんかんのある幼児児童生徒の場合,一般的に,
- 生活のリズムの安定を図ること
- 過度に疲労しないようにすること
- 忘れずに服薬すること
などが重要である。
また,定期的な服薬により発作はコントロール出来ることが多いが,短時間意識を失う小発作の場合には,発作が起きているのを本人が自覚しにくいことから,自己判断して服薬を止めてしまうことがある。
定期的な服薬の必要性について理解させるとともに,確実に自己管理ができるよう指導する必要がある。
小児がんの経験がある幼児児童生徒の場合,
- 治療後に起きる成長障害
- 内分泌障害等
晩期合併症のリスクがあることを理解して,体調の変化や感染症予防等に留意するなど,
- 病気の予防
- 適当な運動
- 睡眠
等の健康管理を自らできるようにする必要がある。
このように,幼児児童生徒が自分の病気を理解し,病気の状態を維持・改善していくために,自分の生活を自ら管理することのできる力を養っていくことは極めて重要である。
こうした力の育成には,幼児児童生徒の発達や健康の状態等を考慮して,その時期にふさわしい指導を段階的に行う必要がある。
その際,専門の医師の助言を受けるとともに,保護者の協力を得るようにすることも忘れてはならない。
生涯にわたって、病気と付き合いながら生活するのは子ども自身!
自己管理ができると将来の生活に自信が持てることが見込まれます♪
③他の項目との関連例
てんかんの発作は,
- 全身がけいれんするもの
- 短時間意識を失うもの
- 急に歩き回ったり同じ行動を意味もなく繰り返したりするもの
など多様であるため,身体症状だけでは分かりにくいことがある。
そのため,発作が疑われるような行動が見られた場合には,専門の医師に相談する必要がある。
てんかんのある幼児児童生徒の場合,定期的な服薬の必要性について理解するとともに,服薬により多くの場合は発作をコントロールできるという安心感をもたせることも重要である。
てんかんのある幼児児童生徒の中には他の障害を伴っていることがある。
障害のため生活上の留意事項を理解し守ることや定期的な服薬が難しい場合には,個々の幼児児童生徒のコミュニケーション手段や理解の状況,生活の状況等を踏まえて,
例えば,
- 疲労を蓄積しないことや,定期的に服薬をすることを具体的に指導したり
- てんかんについて分かりやすく示した絵本や映像資料などを用いて理解を図ったり
することも大切である。
また,ストレスをためることがてんかん発作の誘因となることがあるので,情緒の安定を図るように指導することも大切である。
注意事項を守り服薬を忘れないようにするためには,周囲の人の理解や協力を得ることが有効な場合がある。
そこで,幼児児童生徒の発達の段階等に応じて,自分の病状を他の人に適切に伝えることができるようにすることも大切である。
このようなことから,てんかんのある幼児児童生徒が知的障害や発達障害を伴う場合には,病気の状態の理解を図り,自発的に生活管理を行うことができるようにすることが必要であるため,この項目についての実際的な指導方法を工夫するとともに,「2心理的な安定」や「6コミュニケーション」等の区分に示されている項目の中から必要な項目を選定し,それらを相互に関連付けて指導内容を設定することが大切である。
少しずつ自己管理の力を育んでいきましょう!
他の人にも理解してもらって、支援者を増やしていきましょう♪