「(5)作業に必要な動作と円滑な遂行に関すること。」は,作業に必要な基本動作を習得し,その巧緻性や持続性の向上を図るとともに,作業を円滑に遂行する能力を高めることを意味している。
目次
具体的指導内容例と留意点
作業に必要な基本動作を習得するためには,姿勢保持と上肢の基本動作の習得が前提として必要である。
つまり,
- 自分一人で,あるいは補助的手段を活用して座位保持
- 机上で上肢を曲げたり伸ばしたり
- ものを握ったり放したりする
などの動作ができなければならない。
また,作業を円滑に遂行する能力を高めるためには,
- 両手の協応
- 目と手の協応
- 正確さ
- 速さ
- 持続性
などの向上が必要である。
さらに,その正確さと速さを維持し,条件が変わっても持続して作業を行うことができるようにする必要がある。
肢体不自由のある幼児児童生徒の場合,左右を協調させた上肢操作のぎこちなさのため,ひもをつまんだり,交差させたりしてひもを結ぶことが困難となる。
そこで,
- 指の曲げ伸ばしをしたり
- 指を対向させたり
するような物を介さない基本的な動きを取り入れるとともに,必要に応じて片方のひもを押さえておく補助具を活用することが有効である。
ADHDのある幼児児童生徒の場合,注意の持続の困難さに加えて,目と手の協応動作や指先の細かい動き,体を思った通りに動かすこと等が上手くいかないことから,身の回りの片付けや整理整頓等を最後まで遂行することが苦手なことがある。
そこで,
- 身体をリラックスさせる運動
- ボディーイメージを育てる運動
に取り組みながら,身の回りの生活動作に習熟することが大切である。
また,ADHDのある幼児児童生徒の場合,手足を協調させて動かすことや微細な運動をすることに困難が見られることがある。
そのため,
- 目的に即して意図的に身体を動かすことを指導したり
- 手足の簡単な動きから始めて,段階的に高度な動きを指導したり
することなどが必要である。
また,手指の巧緻性を高めるためには,幼児児童生徒が興味や関心をもっていることを生かしながら,道具等を使って手指を動かす体験を積み重ねることが大切である。
例えば,エプロンのひも結びについて,
- 一つ一つの動作を身に付けることから始め
- 徐々に身に付けた一つ一つの動作をつなげ
- 連続して行えるようにする
ことが大切である。
その際,手本となる動作や幼児児童生徒自身の動作を映像で確認するなど,自ら調整や改善を図っていくことができるよう工夫することが大切である。
このように,障害の状態によっては,身体の動きの面で,関係する教科等の学習との関連を図り,作業に必要な基本動作の習得や巧緻性,敏捷性の向上を図るとともに,目と手の協応した動き,姿勢や作業の持続性などについて,自己調整できるよう指導することが大切である。
自己調整できるように指導する過程では、成果が出るのにとても時間がかかります💦
自己調整する力は生涯にわたって役立つと考えて長期目線で取り組みましょう♪
他の項目との関連例
自閉症のある幼児児童生徒の場合,
- 自分のやり方にこだわりがあったり
- 手足を協調させてスムーズに動かしたりすることが難しい
- 他者の意図を適切に理解することが困難であったり
- 興味のある一つの情報のみに注意が集中してしまったり
することから,教師が示す手本を自ら模倣しようとする意識がもてないことがある。その結果,作業に必要な巧緻性などが十分育っていないことがある。
このような場合には,
- 一つの作業についていろいろな方法を経験させるなどして,作業のやり方へのこだわりを和らげたり
- 幼児児童生徒と教師との良好な人間関係を形成し,幼児児童生徒が主体的に指導者の示す手本を模倣しようとする気持ちを育てたり
することが大切である。
したがって,自閉症のある幼児児童生徒に対しては,この項目に加えて,「2心理的な安定」や「3人間関係の形成」等の区分に示されている項目の中から必要な項目を選定し,それらを相互に関連付けて具体的な指導内容を設定することが大切である。
知的障害のある幼児児童生徒の場合,粗大な運動・動作には問題は見られないものの,細かい手先を使った作業の遂行が難しかったり,その持続が難しかったりすることがある。
このような要因としては,
- 自分の身体の各部位への意識が十分に高まっていないこと
- 両手や目と手の協応動作の困難さ,巧緻性や持続性の困難さなど,認知面及び運動・動作面の課題
- 日常生活場面等における経験不足
などが考えられる。また,見通しをもちにくいことから持続するのが難しいことも考えられる。
このような場合には,
- 手遊び
- ビーズなどを仕分ける活動
- ひもにビーズを通す活動
など,幼児児童生徒が両手や目と手の協応動作などができるように指導することが大切である。
その際,単に訓練的な活動とならないよう,幼児児童生徒が,興味や関心のもてる内容や課題を工夫し,楽しんで取り組めるようにしたり,ものづくりをとおして,他者から認められ,達成感が得られるようにしたりするなど,意欲的に取り組めるようにすることが大切である。
したがって,知的障害の幼児児童生徒が,細かい手先を使った作業を遂行するためには,この項目の内容と,「4環境の把握」などの区分に示されている項目の中から必要な項目を選定し,それらを相互に関連付けて具体的な指導内容を設定することが大切である。
将来の職業選択や職業生活にも関わる指導になります。
自分で作業の成果をチェックできる仕組みをつくると自律的に学習が進みます♪
作業環境は変わっていくことを前提にしつつ、様々な環境で力を発揮できることも重要です。
その柔軟性が選択肢を広げることにつながるかもしれません♪