「(1)情緒の安定に関すること。」は,情緒の安定を図ることが困難な幼児児童生徒が,安定した情緒の下で生活できるようにすることを意味している。
目次
具体的指導内容例と留意点
障害のある幼児児童生徒は,生活環境など様々な要因から,心理的に緊張したり不安になったりする状態が継続し,集団に参加することが難しくなることがある。
このような場合は,環境的な要因が心理面に大きく関与していることも考えられることから,
- 睡眠
- 生活のリズム
- 体調
- 天気
- 家庭生活
- 人間関係
など,その要因を明らかにし,情緒の安定を図る指導をするとともに,必要に応じて環境の改善を図ることが大切である。
白血病の幼児児童生徒の場合,入院中は治療の副作用による貧血や嘔吐などが長期間続くことにより,情緒が不安定な状態になることがある。
そのようなときは,
- 悩みを打ち明けたり
- 自分の不安な気持ちを表現できるようにしたり
- 心理的な不安を表現できるような活動をしたり
するなどして,情緒の安定を図ることが大切である。
治療計画によっては,入院と退院を繰り返すことがあり,感染予防のため退院中も学校に登校できないことがある。このような場合には,テレビ会議システム等を活用して学習に対する不安を軽減するような指導を工夫することが大切である。
自閉症のある幼児児童生徒で,他者に自分の気持ちを適切な方法で伝えることが難しい場合,
- 自ら自分をたたいてしまうこと
- 他者に対して不適切な関わり方をしてしまうこと
がある。
こうした場合,
- 自分を落ち着かせることができる場所に移動して
- 慣れた別の活動に取り組むなどの経験を積み重ねる
- その興奮を静める方法を知る
- 様々な感情を表した絵カードやメモなどを用いて自分の気持ちを伝える
などの手段を身に付けられるように指導することが大切である。
ADHDのある幼児児童生徒の場合,自分の行動を注意されたときに,反発して興奮を静められなくなることがある。
このような場合には,
- 自分を落ち着かせることができる場所に移動して
- その興奮を静める
- いったんその場を離れて深呼吸する
などの方法があることを教え,それらを実際に行うことができるように指導することが大切である。
また,注意や集中を持続し,安定して学習に取り組むことが難しいことがある。
そこで,
- 刺激を統制した落ち着いた環境で
- 必要なことに意識を向ける経験を重ねる中で
- 自分に合った集中の仕方や課題への取り組み方を身に付け
- 学習に落ち着いて参加する態度を育てていく
ことが大切である。
LDのある児童生徒の場合,例えば,読み書きの練習を繰り返し行っても,期待したほどの成果が得られなかった経験などから,生活全般において自信を失っている場合がある。
そのため自分の思う結果が得られず感情的になり,情緒が不安定になることがある。
このような場合には,
- 本人が得意なことを生かして課題をやり遂げるように指導し
- 成功したことを褒めることで自信をもたせたり
- 自分のよさに気付くことができるようにしたり
することが必要である。
また,チックの症状のある幼児児童生徒の場合,不安や緊張が高まった状態になると,身体が動いてしまったり,言葉を発してしまったりすることがある。
このような場合,
- 不安や緊張が高まる原因を知り
- 自ら不安や緊張を和らげるようにする
などの指導をすることが大切である。
障害が重度で重複している幼児児童生徒は,情緒が安定しているかどうかを把握することが困難な場合がある。
そのような場合には,その判断の手掛かりとして「快」,「不快」の表出の状態を読み取ることが重要である。
そして,安定した健康状態を基盤にして「快」の感情を呼び起こし,その状態を継続できるようにするための適切な関わり方を工夫することが大切である。
なお,障害があることや過去の失敗経験等により,自信をなくしたり,情緒が不安定になりやすかったりする場合には,機会を見つけて自分のよさに気付くようにしたり,自信がもてるように励ましたりして,活動への意欲を促すように指導することが重要である。
自分自身の心理状態が安定していく過程を経験し、方法を理解し、必要性を自覚することで習慣化につなげていきましょう♪
他の項目との関連例
心身症の幼児児童生徒の場合,
- 心理的に緊張しやすく
- 不安になりやすい傾向
がある。
また,身体面では,
- 嘔吐
- 下痢
- 拒食
等様々な症状があり,日々それらが繰り返されるため強いストレスを感じることがある。それらの結果として,集団に参加することが困難な場合がある。
こうした幼児児童生徒が,自ら情緒的な安定を図り,日常生活や学習に意欲的に取り組むことができるようにするためには,教師が病気の原因を把握した上で,本人の気持ちを理解しようとする態度でかかわることが大切である。
その上で,良好な人間関係作りを目指して,集団構成を工夫した小集団で,様々な活動を行ったり,十分にコミュニケーションができるようにしたりすることが重要である。
そこで,心身症のある幼児児童生徒が情緒を安定させ,様々な活動に参加できるようにするためには,この項目に加え,「3人間関係の形成」や「6コミュニケーション」等の区分に示されている項目の中から必要な項目を選定し,それらを相互に関連付けて具体的な指導内容を設定することが大切である。
心身症には様々な身体症状があります。朝起きられない、頭痛、などがあれば起立性調節障害を疑ってみてください。