「(5)健康状態の維持・改善に関すること。」は,障害のため,運動量が少なくなったり,体力が低下したりすることを防ぐために,日常生活における適切な健康の自己管理ができるようにすることを意味している。
目次
具体的指導内容例と留意点
障害が重度で重複している幼児児童生徒の場合,健康の状態を明確に訴えることが困難なため,様々な場面で健康観察を行うことにより,変化しやすい健康状態を的確に把握することが必要である。
その上で,例えば,
- 乾布摩擦
- 軽い運動
- 空気,水,太陽光線を利用して皮膚や粘膜を鍛えたり
して,血行の促進や呼吸機能の向上などを図り,健康状態の維持・改善に努めることが大切である。
たんの吸引等の医療的ケアを必要とする幼児児童生徒の場合,この項目の指導が特に大切である。
その際,健康状態の詳細な観察が必要であること,指導の前後にたんの吸引等の医療的ケアが必要なこともあることから,養護教諭や看護師等と十分連携を図って指導を進めることが大切である。
知的障害や自閉症のある幼児児童生徒の中には,運動量が少なく,結果として肥満になったり,体力低下を招いたりする者も見られる。
また,心理的な要因により不登校の状態が続き,運動量が極端に少なくなったり,食欲不振の状態になったりする場合もある。
このように,障害のある幼児児童生徒の中には,障害そのものによるのではなく,二次的な要因により体力が低下する者も見られる。
このような幼児児童生徒の体力低下を防ぐためには,
- 運動することへの意欲を高めながら適度な運動を取り入れたり
- 食生活と健康について実際の生活に即して学習したり
するなど,日常生活において自己の健康管理ができるようにするための指導が必要である。
健康状態の維持・改善を図る指導を進めるに当たっては,主治医等から個々の幼児児童生徒の健康状態に関する情報を得るとともに,日ごろの体調を十分に把握する必要があることから,医療機関や家庭と密接な連携を図ることが大切である。
「鍛える」と思わずに、楽しみながら運動していきましょう♪
他の項目との関連例
心臓疾患の幼児児童生徒の場合,運動が制限されていても,その範囲を超えて身体を動かしてしまい病気の状態を悪化させることがあるため,病気の状態や体調に応じて生活を自己管理できるようにすることが重要である。
大きな手術を必要とする場合には,就学前に手術を受けていることが多いため,就学後も生活管理を必要とすることがあるので,既往症や手術歴を把握した上で指導に当たることが重要である。
そのためには,
- 心臓疾患の特徴
- 治療方法
- 病気の状態
- 生活管理
などについて,個々の発達の段階等に応じて理解ができるようにするとともに,
- 自覚症状
- 体温
- 脈拍
等から自分の健康の状態を把握し,その状態に応じて日常生活や学習活動の状態をコントロールしたり,自ら進んで医師に相談したりできるようにすることが大切である。
なお,これらの指導を行う際には,生活管理や入院生活から生じるストレスなどの心理的な側面にも配慮するとともに,実施可能な運動等については学校生活管理指導表等を参考にしながら可能な限り取り組めるようにするなどの配慮が重要である。
こうしたことから,心臓疾患等の病気のある幼児児童生徒が,健康の自己管理ができるようにするためには,この項目に加えて,「1健康の保持」の区分に示されている他の項目や「2心理的な安定」等の区分に示されている項目の中から必要な項目を選定し,それらを相互に関連付けて具体的な指導内容を設定することが大切である。
病気の理解は高度に思われますが、子どもにもわかるように伝えることは可能です♪
やりたいことができない悔しさやストレスがあることに共感的理解を示しましょう!