「(3)自己の理解と行動の調整に関すること。」は,自分の得意なことや不得意なこと,自分の行動の特徴などを理解し,集団の中で状況に応じた行動ができるようになることを意味している。
目次
具体的指導内容例と留意点
自己に対する知識やイメージは,様々な経験や他者との比較を通じて形成されていく。
障害のある幼児児童生徒は,障害による認知上の困難や経験の不足等から自己の理解が十分でない場合がある。
知的障害のある幼児児童生徒の場合,過去の失敗経験等の積み重ねにより,自分に対する自信がもてず,行動することをためらいがちになることがある。
このような場合は,
- 本人が容易にできる活動を設定し
- 成就感を味わうことができるようにして
- 徐々に自信を回復しながら
- 自己に肯定的な感情を高めていく
ことが大切である。
肢体不自由のある幼児児童生徒の場合,経験が乏しいことから自分の能力を十分理解できていないことがある。
- 自分でできること
- 補助的な手段を活用すればできること
- 他の人に依頼して援助を受けること
などについて,実際の体験を通して理解を促すことが必要である。
ADHDのある幼児児童生徒の場合,衝動の抑制が難しかったり,自己の状態の分析や理解が難しかったりするため,同じ失敗を繰り返したり,目的に沿って行動を調整することが苦手だったりすることがある。
そこで,
- 自分の行動とできごととの因果関係を図示して理解させたり
- 実現可能な目当ての立て方や点検表を活用した振り返りの仕方を学んだり
して,自ら適切な行動を選択し調整する力を育てていくことが大切である。
また,障害のある幼児児童生徒は,経験が少ないことや課題に取り組んでもできなかった経験などから,自己に肯定的な感情をもつことができない状態に陥っている場合がある。
その結果,活動が消極的になったり,活動から逃避したりすることがあるので,早期から成就感を味わうことができるような活動を設定するとともに,自己を肯定的に捉えられるように指導することが重要である。
成功体験や失敗体験について、自立活動の視点で話し合うような関係性であることが重要です♪
他の項目との関連例
自閉症のある幼児児童生徒の場合,自分の長所や短所に関心が向きにくいなど,自己の理解が困難な場合がある。
また,「他者が自分をどう見ているか」,「どうしてそのような見方をするのか」など,他者の意図や感情の理解が十分でないことから,友達の行動に対して適切に応じることができないことがある。
このような場合には,
- 体験的な活動を通して自分の得意なことや不得意なことの理解を促したり
- 他者の意図や感情を考え,それへの対応方法を身に付けたり
する指導を関連付けて行うことが必要である。
また,自閉症のある幼児児童生徒の場合,特定の光や音などにより混乱し,行動の調整が難しくなることがある。
そうした場合,光や音などの刺激の量を調整したり,避けたりするなど,感覚や認知の特性への対応に関する内容も関連付けて具体的な指導内容を設定することが求められる。
このように,自閉症のある幼児児童生徒が,自己を理解し,状況に応じて行動できるようになるためには,この項目と「(2)他者の意図や感情の理解に関すること。」の項目などを関連付けるとともに,「4環境の把握」等の区分に示されている項目などとも相互に関連付けて具体的な指導内容を設定することが大切である。
指導を焦ると、できないことを指摘したくなることに注意しましょう💦
子どもが自分の弱さや苦手さを開示できる相手でありたいものです。
「できることを理解してくれている、日頃から認めてくれる、信頼できる先生」ですね♪