「(3)言語の形成と活用に関すること。」は,コミュニケーションを通して,事物や現象,自己の行動等に対応した言語の概念の形成を図り,体系的な言語を身に付けることができるようにすることを意味している。
目次
具体的指導内容例と留意点
コミュニケーションは,
- 相手からの言葉や身振り,その他の方法による信号を受容し
- それを具体的な事物や現象と結び付けて理解する
ことによって始まる。
したがって,言語の形成については,言語の受容と併せて指導内容・方法を工夫することが必要である。その際には,語彙や文法体系の習得に努めるとともに,それらを通して言語の概念が形成されることに留意する必要がある。
障害の状態が重度な場合には,話し言葉を用いることができず,限られた音声しか出せないことが多い。
このような場合には,
- 掛け声や擬音・擬声語等を遊びや学習,生活の中に取り入れて
- 自発的な発声・発語を促すようにする
ことも考えられる。また,ときには,物語や絵本を身振りなどを交えて読み聞かせることも大切である。
聴覚障害のある幼児児童生徒の場合,体験したことと日本語とを結び付けることが困難になりやすいことから,幼児児童生徒の主体性を尊重しながらも,教師など周りの人々による意図的な働き掛けが必要である。
また,例えば,体験した出来事を文章(5W1H)で表現するために,
- まず手話で体験した出来事を表現し
- その内容を日本語に置き換えながら文章を書く
など,手話を活用した日本語の指導も考えられる。
「何を書くか(内容)」と「どのように書くか(日本語表現)」の両方を考える負担がかかり,なかなか文章を書き進めることができない幼児児童生徒に対しては,手話を活用することにより「何を書くか」を決めさせたのち,「どのように書くか」に専念して書かせる指導が考えられる。
また,写真や絵などを見て分かったことや考えたことを学級で話し合い,それを文章で表現する指導なども考えられる。
言語発達に遅れのある幼児児童生徒の場合,語彙が少ないため自分の考えや気持ちを的確に言葉にできないことや相手の質問に的確に答えられないことなどがある。
そこで,幼児児童生徒の興味・関心に応じた教材を活用し,語彙を増やしたり,言葉のやりとりを楽しんだりすることが必要である。
特に,幼児の場合は,言語による直接的な指導以外に,
- 絵画
- 造形活動
- ごっこ遊び
- 模倣
を通して,やりとりの楽しさを知り,コミュニケーションの基礎的能力に関する項目と関連付けて具体的な指導内容を設定することが大切である。
視覚障害により,視覚を活用した学習が困難な幼児児童生徒の場合,一面的な理解で,事物,事象や動作と言葉が結びつくことも少なくない。
そこで,
- 実際に体験ができるような教材・教具を工夫したり
- 触覚や聴覚,あるいは保有する視覚を適切に活用したり
して,言葉の意味を正しく理解し,活用できるよう指導することが大切である。
例えば,「さかな」という言葉の概念を形成するためには,
- 切り身の「さかな」だけではなく,調理前の一尾そのままを触って
- 形や触感,においを確認したり
- 水中の魚に触れて動きを感じたり
することが大切である。
その際,教師が幼児児童生徒のそれまでの経験を生かせるように,分かりやすい言葉を添えることで「さかな」についての理解が深まることになる。
LDのある児童生徒の場合,言葉は知っているものの,その意味を十分に理解せずに活用したり,意味を十分に理解していないことから活用できず,思いや考えを正確に伝える語彙が少ないことがある。
そこで,
- 実体験,写真や絵と言葉の意味を結び付けながら理解する
- ICT機器等を活用し,見る力や聞く力を活用しながら言語の概念を形成する
ように指導することが大切である。
言語は、記銘(記憶)とコミュニケーションに使われます。
記憶する価値、共有する価値がある、そういうインパクトが土台にあることが重要♪
他の項目との関連例
言葉の発達に遅れのある場合,コミュニケーションを円滑に行うことが難しい。
このような要因としては,
- 話す,聞く等の言語機能に発達の遅れや偏りがあるために
- 結果的に乳幼児期のコミュニケーションが十分に行われなかったこと
- 言語環境が不十分なこと
が考えられる。
このような場合には,自立活動担当の教師との安心できる場で言葉遊びを行ったり,作業や体験的な活動を取り入れたりすることが大切である。
また,語彙の習得や上位概念,属性,関連語等の言語概念の形成には,生活経験を通して,様々な事物を関連付けながら言語化を行うことが大切である。
そのためには,
- 課題の設定を工夫して
- 幼児児童生徒に「できた」という経験と自信をもたせ
- コミュニケーションに対する意欲を高め
- 言葉を生活の中で生かせるようにしていく
ことが大切である。
したがって,言葉の発達に遅れのある幼児児童生徒にコミュニケーションを通して適切な言語概念の形成を図り,体系的な言語を身に付けるようにするためには,この項目の内容と「2心理的な安定」,「3人間関係の形成」等の区分に示されている項目の中から必要な項目を選定し,それらを相互に関連付けて具体的な指導内容を設定することが大切である。
言語を課題化すると「言葉≒指導・評価されるもの」となって意欲が低下することがあります。
ポジティブ感情をベースにやりとりを継続・発展させて、言葉の世界を広げていきましょう♪