「(3)日常生活に必要な基本動作に関すること。」は,食事,排泄,衣服の着脱,洗面,入浴などの身辺処理及び書字,描画等の学習のための動作などの基本動作を身に付けることができるようにすることを意味している。
目次
具体的指導内容例と留意点
日常生活に必要な基本動作を身に付けることは,幼児児童生徒の自立にとって,極めて重要なことである。
これらを身に付けるには,姿勢保持,移動,上肢の諸動作といった基本動作が習得されていることが必要であり,座位,立位を保持しながら,上肢を十分に動かすことができることがその基礎になる。
つまり,
- 安定した座位を確保しながら,両腕を体の前へ伸ばすことができること。
- 身体の正面で両手を合わせることができ,指を握ったり開いたりすることができること。
- 身体のほとんどの部位へ指先が届くこと。
- 手の動きを目で追うこと。
というような動作が可能であれば,さらに,次の段階の指導を工夫することによって,日常生活の諸動作の多くを行うことができるようになる。
その上で,これらの動作を実際の日常生活で使うことができるところまで習慣化していくことが大切である。
また,運動・動作が極めて困難な幼児児童生徒の場合,日常生活に必要な基本動作のほとんどを援助に頼っている場合が多い。
このような幼児児童生徒の場合には,援助を受けやすい姿勢や手足の動かし方を身に付けることを目標として,指導を行うことが必要である。
基本動作の獲得は、生活が楽になることにつながります♪
保護者にとっては「介助が楽になる」こともメリットです。
「小さな動き」と思うかもしれませんが、想いのほか大事なのが基本動作です♪
他の項目との関連例
知的障害のある幼児児童生徒の場合,知的発達の程度等に比較して,衣服の着脱におけるボタンの着脱やはさみなどの道具の操作などが難しいことがある。
このような要因としては,
- 目と手指の協応動作の困難さ
- 巧緻性,持続性の困難さ
- 認知面及び運動面の課題
- 日常生活場面等における経験不足
などが考えられる。
このような場合には,
- 幼児児童生徒が意欲的に活動に取り組み
- 道具等の使用に慣れていけるよう,興味や関心がもてる内容や課題を工夫し
- 使いやすい適切な道具や素材に配慮する
ことが大切である。
その上で,課題の難易度を考慮しながら,
- ボタンはめの前にボタン外しから取り組むこと
- ボタンや穴の大きさを徐々に小さくすること
- 切る長さを徐々に長くしたり
- 直線から曲線など切る形を変えたり
などの日常生活に必要な基本動作を指導していくことが大切である。
したがって,知的障害のある幼児児童生徒が,衣服の着脱におけるボタンはめなどや,はさみなどの道具を円滑に操作するためには,この項目の内容と,「4環境の把握」などの区分に示されている項目の中から必要な項目を選定し,それらを相互に関連付けて具体的な指導内容を設定することが大切である。
LDのある児童生徒の場合,
- 鉛筆の握り方がぎこちなく過度に力が入りすぎてしまうこと
- 筆圧が強すぎて行や枠からはみ出てしまうこと
等,手や指先を用いる細かい動きのコントロールが苦手な者もいる。
更に,上手く取り組めないことにより焦りや不安が生じて,余計に書字が乱れてしまうことがある。
このような原因としては,目と手,右手と左手等を協応させながら動かす運動が苦手なことが考えられる。
このような場合には,
- 本人の使いやすい形や重さの筆記用具
- 滑り止め付き定規
等,本人の使いやすい文具を用いることにより,安心して取り組めるようにした上で指導することが大切である。
また,自分の苦手な部分を申し出て,
- コンピュータによるキーボード入力等で記録すること
- 黒板を写真に撮ること
等,ICT機器を用いて書字の代替を行う事も大切である。
したがって,LDのある児童生徒が,落ち着いて自信をもち書字や描画に取り組むためには,この項目の内容と「2心理的な安定」,「4環境の把握」の区分に示されている項目の中から必要な項目を選定し,それらを相互に関連付けて具体的な指導内容を設定することが大切である。
①本人が動きのコツをつかむこと
②補助具を使うこと
③両方を組み合わせること
これらを発達段階や状況に応じて、子どもと一緒に試行錯誤しながら最適解を決めてきましょう♪