【環境の把握】(1)保有する感覚の活用に関すること【自立活動】

重要フレーズ

「(1)保有する感覚の活用に関すること。」は,保有する視覚,聴覚,触覚,嗅覚,固有覚,前庭覚などの感覚を十分に活用できるようにすることを意味している。

なお,固有覚とは,筋肉や関節の動きなどによって生じる自分自身の身体の情報を受け取る感覚であり,主に力の加減や動作等に関係している感覚である。固有覚のはたらきにより,運動は絶えず軌道修正され,目を閉じていてもある程度正しく運動することができる。

また,前庭覚とは,重力や動きの加速度を感知する感覚であり,主に姿勢のコントロール等に関係している感覚である。前庭覚のはたらきにより,重力に対してどのような姿勢にあり,身体が動いているのか止まっているのか,どのくらいの速さでどの方向に動かしているのかを知ることができる。

具体的指導内容例と留意点

(課題例)視覚障害の場合

視覚障害のある幼児児童生徒の場合,聴覚や触覚を活用し,弱視であれば,保有する視覚を最大限に活用するとともに,その他の感覚も十分に活用して,学習や日常生活に必要な情報を収集するための指導を行うことが重要である。

例えば,ある目的地に行くための歩行指導において,目的地の途中にあるパン屋のにおいが自分の位置を判断する手掛かりになったり,理科の実験において,化学変化の様子がにおいの変化でわかったりすることもある。

においも学習や日常生活に必要な情報となるので,様々なにおいを体験したり,知っているにおいを言葉で表現したりできるように,様々な機会に指導することが大切である。

(課題例)聴覚障害の場合

聴覚障害のある幼児児童生徒の場合,補聴器等の装用により,保有する聴力を十分に活用していくための指導が必要である。

さらに,場所や場面に応じて,

  • 磁気ループを用いた集団補聴システム
  • FM電波や赤外線を用いた集団補聴システム
  • FM補聴器

等の機器の特徴に応じた活用ができるようにすることが大切である。

(課題例)肢体不自由の場合

肢体不自由のある幼児児童生徒の場合,運動・動作に伴う筋の収縮・伸張,関節の屈曲・伸展などに制限や偏りがあり,自分自身の体位や動きを把握し,調整することに困難さが見られる。

そこで,自分自身の体位や動きについて,

  • 視覚的なイメージを提示したり
  • 分かりやすい言葉で伝えたり

して,自分の身体を正しく調整することができる力を身に付けることが大切である。

(課題例)重度・重複障害の場合

障害が重度で重複している幼児児童生徒の場合,

  • 視覚,聴覚,触覚
  • 姿勢の変化
  • 筋,関節の動きなどを感じ取る固有覚
  • 前庭覚

を活用できるようにすることも考慮する必要がある。

その際,それらを個々の感覚ごとにとらえるだけでなく,相互に関連付けてとらえることが重要である。

例えば,玩具を手に持って目の前で振っている状態は,玩具の色や形を視覚で,かたさやなめらかさを触覚で感じているほか,よく見ようとして姿勢を変化させ,玩具を握ったり振ったりするために,筋や関節を絶えず調整しているととらえることができる。

つまり,様々な感覚を関連させながら運動・動作を行っているのである。

したがって,個々の感覚の状態とその活用の仕方を的確に把握した上で,保有する感覚で受け止めやすいように情報の提示の仕方を工夫することが大切である。

ダイナモ
ダイナモ

保有する感覚を効果的に使っていく方法を一緒に考えていきましょう。

重度の場合には、感覚と運動の相互作用によって子どもの活動を活性化していきましょう♪


他の項目との関連例

【重度・重複障害】様々な感覚と運動を関連させる(環境×身体×コミュニケーション)

快の感情を呼び起こす感覚の特定

障害が重度で重複している幼児児童生徒の場合,視覚や聴覚への働き掛けに対して明確な応答が見られないことがある。しかし,このような場合であっても,教師が抱きかかえて揺らしてみると笑顔が見られることがある。これは,スキンシップによる触覚や揺れの感覚が,快の感情をもたらしているものと考えられる。

快の感情に結びつく感覚を拡大しながら運動を誘発

そして,そうした働き掛けに加えて,

  1. 玩具を見せたり言葉掛けをしたりするなど視覚や聴覚の活用を促すことも大切である
  2. 適度な揺さぶりの中で視覚や聴覚に対する働き掛けも心地よく受け止められるようになったら
  3. 目の前に音の出る玩具などを示し,音を聞きながら目で玩具を追ったり音の方に顔を向けて玩具を見つめたりできるように働き掛けを発展させていく
  4. その玩具に手を触れさせて,自分の手を動かして音を出したり音の出る玩具を目で見つめて手を伸ばして取ったりという動作を誘発させる

感覚と運動の協調を促す指導

このように,細かなステップを追って,視覚と聴覚を協調させたり,視覚と手の運動を協調させたりする指導が求められる。

そこで,障害が重度で重複している幼児児童生徒に,保有する感覚の活用を促す指導を行うためには,この項目に加えて,幼児児童生徒一人一人の実態に応じて「5身体の動き」や「6コミュニケーション」等の区分に示されている項目の中から必要な項目を選定し,それらを相互に関連付けて具体的な指導内容を設定することが大切である。

ダイナモ
ダイナモ

重度・重複障害の場合、学校卒業後の生活が豊かになることに直結する指導内容です♪

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