「(1)生活のリズムや生活習慣の形成に関すること。」は,体温の調節,覚醒と睡眠など健康状態の維持・改善に必要な生活のリズムを身に付けること,食事や排泄などの生活習慣の形成,衣服の調節,室温の調節や換気,感染予防のための清潔の保持など健康な生活環境の形成を図ることを意味している。
目次
具体的指導内容例と留意点
障害が重度で重複している幼児児童生徒であって,発達の遅れが著しいほど,このような観点からの指導を行う必要がある。
このような幼児児童生徒には,覚醒と睡眠のリズムが不規則なことが多く,しかも,体力が弱かったり,食事の量や時間,排泄の時刻が不規則になったりする傾向が見られる。
こうした幼児児童生徒の場合には,睡眠,食事,排泄というような基礎的な生活のリズムが身に付くようにすることなど,健康維持の基盤の確立を図るための具体的な指導内容の設定が必要である。
また,障害に伴う様々な要因から生活のリズムや生活習慣の形成が難しいことがある。
例えば,視覚障害のある幼児児童生徒の場合,昼夜の区別がつきにくいことから覚醒と睡眠のリズムが不規則になり,昼夜逆転した生活になることがある。
自閉症のある幼児児童生徒の場合,特定の食物や衣服に強いこだわりを示す場合があり,極端な偏食になったり,季節の変化にかかわらず同じ衣服を着続けたりすることがある。
また,相手からどのように見られているのかを推測することが苦手な場合がある。そのため,整髪や着衣の乱れなど身だしなみを整えることに関心が向かないことがある。
ADHDのある幼児児童生徒の場合,周囲のことに気が散りやすいことから一つ一つの行動に時間がかかり,整理・整頓などの習慣が十分身に付いていないことがある。
このような場合には,個々の幼児児童生徒の困難の要因を明らかにした上で,無理のない程度の課題から取り組むことが大切である。
生活のリズムや生活習慣の形成は,日課に即した日常生活の中で指導をすることによって養うことができる場合が多い。
また,清潔や衛生を保つことの必要性を理解できるようにし,家庭等との密接な連携の下に不衛生にならないように日常的に心がけられるようにすることが大切である。
なお,生活のリズムや生活習慣の形成に関する指導を行う際には,対象の幼児児童生徒の1日の生活状況を把握する必要がある。特に,
- 覚醒と睡眠のリズム
- 食事及び水分摂取の時間や回数・量
- 食物の調理形態
- 摂取時の姿勢や援助の方法
- 口腔機能の状態
- 排泄の時間帯・回数,方法,排泄のサインの有無
- 呼吸機能
- 体温調節機能
- 服薬の種類や時間
- 発熱
- てんかん発作の有無とその状態
- 嘔吐,下痢,便秘
など体調に関する情報も入手しておくことが大切である。
- 体温の調節
- 覚醒と睡眠
- 食事
- 排泄
- 衣服の調節
- 室温の調節や喚起
- 感染予防のための清潔保持
生活リズムや生活習慣を集中的に扱いたいときは、自立活動の時間が選択肢にはいります♪
他の項目との関連例
障害が重度で重複している幼児児童生徒は,覚醒と睡眠のリズムが不規則になりがちである。
例えば,日中に身体を動かす活動が十分にできないことから,夜になっても眠くならず,その結果,朝起きられなくなり,昼近くになってやっと目覚めるといった状態が続くことがある。
このような場合には,家庭と連携を図って,
- 朝決まった時刻に起きることができるようにし
- 日中は,身体を動かす活動や遊びを十分に行って目覚めた状態を維持
- 規則正しく食事をとったりする
など生活のリズムを形成するための指導を行う必要がある。
日中の活動を計画する際には,幼児児童生徒が視覚や聴覚等の保有する感覚を活用するよう活動内容を工夫することが大切である。
また,自分では身体を動かすことができなくても,教師が補助をして身体を動かすような活動を取り入れることによって覚醒を促すことなども効果的である。
そこで,障害が重度で重複している幼児児童生徒に生活のリズムを形成する指導を行うためには,単に「1健康の保持」の区分に示されている「生活のリズムや生活習慣の形成に関すること。」のみならず,「4環境の把握」や「5身体の動き」等の区分に示されている項目の中から必要な項目を選定し,それらを相互に関連付けて具体的な指導内容を設定することが大切である。
自閉症のある幼児児童生徒の場合,
- 自分の体調がよくない
- 悪くなりつつある
- 疲れている
などの変調がわからずに,無理をしてしまうことがある。
その結果,体調を崩したり,回復に非常に時間がかかったりすることがある。
この原因としては,
- 興味のある活動に過度に集中してしまい,自分のことを顧みることが難しくなってしまうこと
- 自己を客観的に把握することや体内の感覚を自覚すること
などが苦手だということが考えられる。
このような場合には,健康を維持するために,
- 気になることがあっても就寝時刻を守るなど,規則正しい生活をすることの大切さについて理解する
- 必要に応じて衣服を重ねるなどして温度に適した衣服の調節をすることを身に付けたりする
ことが必要である。
また,体調を自己管理するために,客観的な指標となる体温を測ることを習慣化し,体調がよくないと判断したら,その後の対応を保護者や教師と相談することを学ぶなどの指導も考えられる。
こうした健康に関する習慣について指導する場合には,自己を客観視するため,例えば,
- 毎朝その日の体調を記述したり
- 起床・就寝時刻などを記録したり
- スケジュール管理をすること
- 自らの体内の感覚に注目すること
などの指導をすることが大切である。
したがって体調の管理に関する指導については,この項目と「3人間関係の形成」,「4環境の把握」,「6コミュニケーション」等の区分に示されている項目の中から必要な項目を選定し,それらを相互に関連付けて指導内容を設定することが大切である。
課題解決のための手がかりを、広い視野で探せるように指導を計画しましょう♪