「(4)感覚を総合的に活用した周囲の状況についての把握と状況に応じた行動に関すること。」は,いろいろな感覚器官やその補助及び代行手段を総合的に活用して,情報を収集したり,環境の状況を把握したりして,的確な判断や行動ができるようにすることを意味している。
目次
具体的指導内容例と留意点
視覚障害のある児童生徒の場合,白杖を用いて一人で市街を歩くときには,その前に,出発点から目的地までの道順を頭の中に描くことが重要である。
歩き始めてからは,
- 白杖や足下からの情報
- 周囲の音
- 太陽の位置
- におい
など様々な感覚を通して得られる情報を総合的に活用して,それらの情報と頭の中に描いた道順とを照らし合わせ,確かめながら歩くことが求められる。
したがって,周囲の状況を把握し,それに基づいて自分のいる場所や進むべき方向などを的確に判断し行動できるよう指導することが極めて重要である。
また,中学部・高等部の生徒の場合は,必要に応じて,携帯電話のナビゲーション機能などを利用して自分の位置と周囲の状況を把握させることも考えられる。
聴覚障害のある幼児児童生徒の場合,補聴器等を通して得られた情報だけでは,周囲の状況やその変化を十分に把握することが困難な場合がある。
例えば,補聴器の活用の仕方によって,音の方向のとらえ方に違いが生じることもある。
そこで,身の回りの音を聞き取り,様子や言葉を理解する場合には,視覚や嗅覚などの感覚も総合的に活用する指導が必要である。その際には,情報を的確に収集するとともに,様々な感覚をいかに活用するかについても考えさせることが大切である。
知的障害のある幼児児童生徒の場合,自分の身体に対する意識や概念が十分に育っていないため,ものや人にぶつかったり,簡単な動作をまねすることが難しかったりすることがある。
そこで,粗大運動や微細運動を通して,
- 全身及び身体の各部位を意識して動かしたり
- 身体の各部位の名称やその位置などを言葉で理解したりするなど
- 自分の身体に対する意識を高めながら
- 自分の身体が基点となって位置,方向,遠近の概念の形成につなげられる
ように指導することが大切である。
LDのある児童生徒の場合,視知覚のみによって文字を認識してから書こうとすると,目と手の協応動作が難しく,意図している文字がうまく書けないことがある。
そのような場合には,例えば,
- 腕を大きく動かして文字の形をなぞるなど
- 様々な感覚を使って多面的に文字を認識し
- 自らの動きを具体的に想像してから文字を書くこと
ができるような指導をすることが大切である。
このように,視覚,聴覚,触覚などの保有するいろいろな感覚やその補助及び代行手段を総合的に活用して,周囲の状況を的確に把握できるようにすることが大切である。
多くの人と異なる学習・状況判断プロセスを持つと、周りの人からは驚かれることでしょう。
堂々と「私にはこのやり方が合うんです♪」と言えるように、生活実感から成る自信を育てましょう♪
他の項目との関連例
聴覚障害のある幼児児童生徒の場合,聴覚に障害があることにより,背後や外の様子等,周囲の状況を的確に把握できにくいことがある。
また,周囲の人とのコミュニケーションの不十分さなどの影響で,
- 物事がどのように推移してきたか
- 相手がどう思っているか
- これから何が始まるか
などについて,予想できにくい場合もある。
こうした場合には,
- 視覚や嗅覚等の様々な感覚を活用して情報を収集したり
- 多様な手段を活用した積極的なコミュニケーションを通して相手を理解したりするとともに
- それまでに得ている情報等と照らし合わせたりしながら
- 周囲の状況や人の気持ち,今後の展開等を推察する
ことが必要である。
したがって,感覚を総合的に活用して周囲の状況等を理解し,自己の生活に生かす指導については,この項目に加えて,「3人間関係の形成」,「4環境の把握」,「6コミュニケーション」等の区分に示されている項目の中から必要な項目を選定し,それらを相互に関連付けて具体的な指導内容を設定することが大切である。
また,肢体不自由のある幼児児童生徒の場合,動く対象物に手を伸ばしてそれをつかむなどといった目と手を協応させた活動が難しいことがある。
このような要因としては,
- 興味をもって見る対象が限られていること
- 頭部が安定せずに対象を一定時間見続けることができない
ことが考えられる。
このような場合には,
- 頭部を安定させるための補助具を活用したり
- 前腕で上体を支えやすくする姿勢の保持を工夫したりするなどして
- 目の前に置かれた興味のある玩具を注視したり
- ゆっくり動く教材などを追視したりする力を高めていく
ことが大切である。
また,
- 見ていた対象物に手を伸ばして,倒したり転がしたりするなかで
- 物を操作する経験を重ね,目で手の動きを追うような力を付けていく
ことも必要である。
したがって,肢体不自由のある幼児児童生徒が保有している感覚を活用して周囲の状況を把握していくためには,この項目の内容と「4環境の把握」の他の項目や,「5身体の動き」の区分に示されている項目の中から必要な項目を選定し,それらを相互に関連付けて具体的な指導内容を設定することが大切である。
これらの指導により、状況理解ができずに混乱したり、かたまったりせず、自分から動けるようになっていきます♪