「(3)感覚の補助及び代行手段の活用に関すること。」は,保有する感覚を用いて状況を把握しやすくするよう各種の補助機器を活用できるようにしたり,他の感覚や機器での代行が的確にできるようにしたりすることを意味している。
目次
具体的指導内容例と留意点
視覚障害のある幼児児童生徒の場合,小さな文字など細かなものや遠くのものを読み取ることが難しいことがある。
そこで,
- 遠用・近用などの各種の弱視レンズ
- 拡大読書器などの視覚補助具
- タブレット型端末
などを効果的に活用できるように指導することが大切である。
また,明るさの変化を音の変化に変える感光器のように視覚以外の感覚で確認できる機器を必要に応じて活用できるように指導することも大切である。
また,聴覚障害のある幼児児童生徒の場合,補聴器や人工内耳を装用していても,音や他者の話を完全に聞き取れるわけではない。その際,聴覚活用に加えて,視覚を通した情報の収集が考えられる。
視覚を活用した情報収集の方法としては,
- 手話や指文字
- キュード・スピーチ(話し言葉の音韻を五つの母音口形と子音を手指で表す記号(キュー)との組み合わせで表現する方法又はキューサインなど)
- 口形,読話(相手の口形や表情を基にして理解する方法)
などがあり,それぞれの特徴や機能を理解していくことが重要である。
その上で,幼児児童生徒が個々の障害の状態に応じて,聴覚以外の感覚を適切に活用できる力を養うことが大切になる。
自閉症のある幼児児童生徒の場合,聴覚に過敏さが見られ,特定の音を嫌がることがある。
そこで,
- 自分で苦手な音などを知り
- 音源を遠ざけたり
- イヤーマフやノイズキャンセルヘッドホン等の音量を調節する器具を利用したり
するなどして,自分で対処できる方法を身に付けるように指導することが必要である。
また,その特定の音が発生する理由や仕組みなどを理解し,徐々に受け入れられるように指導していくことも大切である。
他にも,聴覚過敏のため,必要な音を聞き分けようとしても,周囲の音が重なり聞き分けづらい場合がある。
こうした場合は,
- 音量を調節する器具の利用等により,
- 聞き取りやすさが向上し,物事に集中しやすくなることを学べるようにし,
- 必要に応じて使い分けられるようにする
ことが大切である。加えて,状況に応じてこれらの器具を使用することを周囲に伝えることができるように指導することも大切である。
以上のように,個々の幼児児童生徒の障害の状態や発達の段階,興味・関心等に応じて,将来の社会生活等に結び付くように補助及び代行手段の適切な活用に努めることが大切である。
代行手段の活用は「みんなと違う」という理由で避けたがる場合があります。
本人・保護者・親族・先生、みんなでその意義を共通理解しましょう。
多様性の時代です。「みんなと違う」のが悪いという価値観を見直しましょう♪
他の項目との関連例
弱視の幼児児童生徒で,遠くの文字が見えにくかったり,本などを読むのに時間がかかったりする場合,遠用・近用などの各種の弱視レンズなどを使いこなすための指導を行うことが大切である。
例えば,
- 動いているバスの行き先表示や時刻表,街頭の標識などの方向に素早くレンズを向け,細かなピント合わせをするよう発達の段階に応じて指導
- 表やグラフの読み取りのため,ルーペを速く正確に動かして数値などを把握する指導
をしたりする必要がある。
これらの指導は,緻密な作業を円滑に遂行する能力を高める指導と関連付けて行うことが大切である。
さらに,思春期になると周囲の人から見られることを気にして弱視レンズの使用をためらうことがある。
そこで,
- 低学年から各種の弱視レンズなどを使ってよく見える体験を繰り返すとともに,
- 障害への理解を図り,障害による困難な状態を改善・克服する意欲を喚起
する指導を行うことが大切である。
したがって,弱視のある幼児児童生徒が,保有する視覚を用いて各種の弱視レンズなどを活用したり,他の感覚や機器で代行したりするためには,この項目に加えて,「5身体の動き」や「2心理的な安定」等の区分に示されている項目の中から必要な項目を選定し,それらを相互に関連付けて具体的な指導内容を設定することが大切である。
補助具を使う生活、使わない生活、様々な経験を通して自分の生活スタイルを確立しましょう♪