児童又は生徒の実態把握に基づいて得られた指導すべき課題相互の関連を検討すること。その際,これまでの学習状況や将来の可能性を見通しながら,長期的及び短期的な観点から指導目標を設定し,それらを達成するために必要な指導内容を段階的に取り上げること。
目次
ア 指導すべき課題相互の関連の検討
自立活動の個別の指導計画を作成する上で,最も重要な点が,実態把握から指導目標(ねらい)を設定するまでのプロセスにある。
学習指導要領等には,自立活動について,教科のように目標の系統性は示されていない。
そのため,幼児児童生徒一人一人の自立活動における指導の継続性を確保するには,個別の指導計画を確実に引き継いでいく必要がある。
つまり,個別の指導計画を通して,前年度までの指導担当者が,その幼児児童生徒の実態をどのように捉え,なぜその指導目標(ねらい)を設定することにしたのかといった,設定に至る考え方を指導担当者間で共有していくことで,指導の根拠を明らかにしやすくなると考えられる。
このため今回の改訂においては,個別の指導計画の作成の手順の中に,実態把握から指導目標(ねらい)を設定する過程において,指導すべき課題を整理する手続きを導入し,指導目標(ねらい)を設定するに至る判断の根拠を記述して残すことについて新たに示した。
実態把握の情報を収束していく方法としては,
- 演繹法
- 帰納法
- 因果法
- 時系列法
等の情報を収束する技法が考えられるが,それぞれの方法の特徴を十分に踏まえながら目的に即した方法を用いることが大切である。
幼児児童生徒の実態把握から課題を焦点化していくに当たって,指導開始時点までの学習の状況から,幼児児童生徒の
- できること
- もう少しでできること
- 援助があればできること
- できないこと
などが明らかになる。
これらのうちから,その年度の指導目標(ねらい)の設定に必要な課題に焦点を当て,中心となる課題を選定していく。そのため,何に着目して課題の焦点化を行うか,その視点を校内で整理し共有することが必要である。
例えば,「もう少しでできること」のうち,その課題が改善されると発達が促され,他の課題の改善にもつながっていくものを中心的な課題として捉えてみるということが考えられる。
また,「援助があればできること」のうち,幼児児童生徒の障害の状態等を踏まえれば現状を維持していくことが妥当であるものや,「できないこと」のうち,数年間指導を継続してきたにも関わらず習得につながる変化が見られないものなどは,指導すべき課題の対象から外してみるということなども考えられる。
また,現在の姿から数年後や卒業後に目指す姿との関連が弱い課題を指導すべき対象から除いていく考え方もある。
いずれにしても,対象となる幼児児童生徒の現在の姿のみにとらわれることなく,
- そこに至る背景
- 学校で指導可能な残りの在学期間
- 数年後や卒業後までに育みたい力との関係
など,幼児児童生徒の中心的な課題を整理する視点を明確にしていく必要がある。
このような手続きを踏まえ,指導すべき課題として抽出された課題については,
- 課題同士の関連
- 指導の優先
- 指導の重点の置き方
等について検証していくことが大切である。
一つ一つの課題は,単独で生じている場合も考えられるが,相互の課題が関連している場合もある。
関連の仕方には,原因と結果の関係,相互に関連し合う関係などが見られる。
こうした因果関係等を整理していくことで,
- 他の多くの課題と関連している課題の存在
- 複数の課題の原因となっている課題の存在
などに注目しやすくなる。また,中心的な課題に対する発展的な課題の見通しなどももちやすくなる。
このような分析や整理を進めていくためには,特定の教師だけに任せることなく,複数の教師で検討する学校のシステムを構築していくことが望まれる。
どのような学習をしていた子どもが、どのように育っているかを知ることで考えの幅が広がります。
担任が終わった後も子どもの成長に関心を持って情報共有をされてください♪
イ 指導目標(ねらい)の設定と目標達成に必要な項目の選定
指導目標(ねらい)の設定に当たっては,個々の幼児児童生徒の実態把握に基づいて整理・抽出された指導すべき課題を踏まえ,幼稚部,小学部,中学部,高等部の各部の在学期間,学年等の長期的な観点に立った指導目標(ねらい)とともに,当面の短期的な観点に立った指導目標(ねらい)を定めることが,自立活動の指導の効果を高めるために必要である。
この場合,個々の幼児児童生徒の障害の状態等は変化し得るものであるので,特に長期の指導目標(ねらい)については,
- 今後の見通しを予測しながら
- 指導すべき課題を再整理し
- 指導目標(ねらい)を適切に変更
し得るような弾力的な対応が必要である。
長期的な観点に立った指導目標(ねらい)を達成するためには,個々の幼児児童生徒の実態に即して必要な指導内容を段階的,系統的に取り上げることが大切である。
すなわち,段階的に短期の指導目標(ねらい)が達成され,それがやがて長期の指導目標(ねらい)の達成につながるという展望が必要である。
それらの展望を描く際には,アで整理した指導すべき課題相互の関連を参考に,第2に示す「内容」の中から必要な項目を選定すると分かりやすい。
このように,具体的な指導目標(ねらい)を設定し,それを達成するために必要な項目を選定するに当たっては,その幼児児童生徒の現在の状態に着目するだけではなく,その生育の過程の中で,現在の状態に至った原因や背景を明らかにし,障害による学習上又は生活上の困難の改善・克服を図るようにすることも大切である。
また,その幼児児童生徒の将来の可能性を広い視野から見通した上で,現在の発達の段階において育成すべき具体的な指導目標(ねらい)とそれを達成するために必要な項目を選定し,重点的に指導することが大切である。
この場合,その幼児児童生徒の将来の可能性を限定的に捉えるのではなく,技術革新や社会の発展を考慮し,長期的な観点から考えることが重要である。
幼稚部においては,指導のねらいと指導内容のそれぞれを,総合的な指導として取り上げるべきか,自立活動の内容に重点を置いた指導として取り上げるべきかについても検討する必要がある。
いずれの形で指導を行う場合においても,幼児の主体性を重んじ,機械的な反復練習にならないよう留意し,自然な形で活動が展開されるようにしなければならない。
なお,幼稚部,小学部,中学部,高等部と継続的に指導していく過程で指導内容の重複や欠落がないように,個々の幼児児童生徒の個別の指導計画に基づく指導記録を個人ファイルなどで適切に管理し,それまでの指導を生かすようにすることが重要である。
オーダーメイドの授業ですから、その指導計画の作成には時間がかかります。
また、その引き継ぎは決して簡単ではありません💦
ダメ出しばかりではなく、アドバイスしたり励まし合ったりして良い授業にしていきましょう♪